牧場の仕事

牛に学べ、大地に学べ。
牧場経営のすべてをここで

酪農家としての力量を
しっかりと身につけて欲しいから、
大切な繁殖の仕事もスタッフに任せています。
野菜づくりがしたい人は、土づくりも一緒にお願いします。
牛から、大地から、そして先輩たちから学び、
これからの吉浦牧場を担える人になってください。

搾乳

●搾乳

牛舎にいる牛をミルキングパーラーへと追い込んだら、一頭一頭をよく見て、乳房の張り具合やツヤなどから病気の有無をチェックします。問題なければ、乳房に消毒液をつけ、カラ拭きしてミルカーを取り付けます。あとは自動で搾乳が始まり自動で終了。最後にふたたび消毒したら終わりです。搾乳が済んだ牛たちは、自分でトコトコと歩いて牛舎に戻っていきます。そうなるように計算して、牛舎とパーラーをセッティングしています。

●出荷

さて算数の問題です。吉浦牧場の本場の1日の生産量は約20トン。タンクローリーで運べる一回の量は14トンです。さて、あまる乳の量は? そう、毎日5~6トンの乳が余るんです。で、それをどうするかというと別のタンクに貯蔵し、全部で14トンになる日を計算して事前に2台のタンクローリーを手配するのです。絞った生乳は、グリコ乳業さんが運んでいってくれます。

繁殖

●繁殖管理

自家育成にこだわっているので、繁殖にはとても力をいれています。1400頭近くいる搾乳牛の発情、種付け、妊娠、出産などの全行程を管理できるようになっているのが、この繁殖ボード。どんな状態の牛がどれだけいるか一目でわかる優れものです。見る人が見れば経営状態までわかってしまうんだとか。アメリカ製ですが使い方はとても簡単です。

●乳牛の種付け

アメリカから取り寄せたトップクラスの雄の精液を使って種付けを行っています。液体窒素の中に保存している数種類の種の中から「これだ!」と思う精液を選び、ストローで牛の子宮に0.5cc注入。数週間後に出る妊娠結果を待ちます。ダメだったら発情状態を見て再度チャレンジ。数名のスタッフがローテーションを組んで担当し、成績を競い合ってレベルアップを図っています。

●和牛の受精卵移植(ET)

獣医師でもある世羅つくし分場長のもとで取り組んでいるのが、和牛の受精卵移植です。今後は、牧場生まれの和牛の雌に和牛精液を人工授精し受精卵を採卵、その受精卵を使って和牛の子牛を生産しようとがんばっているので、受精卵移植という最先端の技術を身につけたいという人にはもってこいの環境です。人工授精士や受精卵移植士の資格にもチャレンジしてみては?

育成

●哺乳

生後20日までの子牛は一頭ずつ人の手で育てていきます。飼料のほかに、40℃に温めたミルクを2リットルほど午前と午後に与えます。母親と離れる寂しさは相当なものですから、親代わりとなって育てる思いやりの気持ちが必要です。子牛を育てるケージは自分たちで手作りしたもの。女性スタッフでもラクに移動ができるように下にコマがついています。つまり特性の乳母車というわけ。

●子牛の出荷

1年間に牧場で生まれるホルスタインの子牛は、約600〜900頭。オスとメスの割合はだいたい半々くらいでしょうか。乳牛の場合、メス牛以外は必要ないので、オスの子牛は6カ月たったら1日でも早く出荷して経営資金にします。世羅つくし分場で生まれるET和牛については、9カ月育成して出荷します。

●餌の管理と餌やり

餌の配合(餌の濃度)は、乳質を一定に保つために繊細なさじ加減が求められる仕事です。乳に含まれる脂肪分やたんばく質など無脂固形分の割合は、季節によって、また日によっても変動するので成分が下がらないように、毎日乳質乳量を記録して管理しています。餌やりは1日に7回、大型のブレンダーを運転しながら餌をやります。意外と難しく、経験とコツが必要な仕事です。

●病気予防

牛が病気にならないように予防するためには、日々の健康管理が大切なのは言うまでもありません。乳房炎、足の状態など、チェックポイントはいくつかありますが、なかでも特に気をつけたいのは代謝管理。牛は乳を出すために大量のエネルギーを使います。エネルギー不足やカルシウム不足は、乳量・乳質を下げてしまいますし、病気を引き起こす原因になります。餌の調整による栄養管理もしっかりと学んでください。

農園

●野菜づくり

今はキャベツづくりが大成功しています。買ってもらうのではなく、買いたいと言っていただけるように、品質や大きさにこだわり、通常の出荷時期をずらしたりして商品力のある野菜づくりを行っています。キャベツ以外の野菜づくりもしていきたいので、栽培してみたいと思う野菜に挑戦するのは大歓迎。ですが、“大量の牛フン処理のための野菜づくり”という壮大なテーマは忘れないでください。

●土壌改良

島根県の吉浦牧場は50ha、広島県の世羅つくし分場は58haと広く(東京ドーム約40個分!)、キャベツ畑をどんどん作っても土地が余っていますから、その土地を自分たちで重機を使って開墾し、大型トラクターを乗りこなして畑そのものから作ることもできます。食物繊維がたっぷりと入った牛フン堆肥をしっかりと入れて、栽培する野菜に合うように土壌を改良。大切なのは経験よりも、科学の目だったりします。

管理

●ローテーション管理

牧場内の仕事は、搾乳A(早番)、搾乳B(遅番)、餌やり、哺乳、外回り(掃除など)の5つに分かれていて、その仕事を分担しながら5日間仕事をして6日目は休むというサイクルで回っています。このローテーションをパソコンで組んでいくのも「外回り」の仕事の一つです。先輩から後輩に仕事を伝えていけるように、スタッフ一人ひとりの力を考えながら組んでいきます。

●掃除当番

掃除と言っても、そのスケールは半端じゃありません。“スキッドローダー”というでっかい乗り物を運転してフン掃除をしていきます。最初は思うように集めたり、すくったりできないかもしれませんが、コツを覚えれば徐々にたくさんすくえるようになって、きれいに掃除ができるようになります。先輩たちのみごとな操作術を見たり盗んだりして覚えていきましょう

●機械管理

スキッドローダーをはじめ、餌をブレンドする大型撹拌車(ミキサー)やブルドーザーなど、牧場内にはたくさんの機械や乗り物があります。これらのメンテナンスも自分たちでやっています。ここでは「なんでもやってみる!」が合い言葉。男も女も関係ありません。大工仕事もすれば、草地の刈り込みもします。だから、ここに来ると何でもできるようになってしまいます。

●海外視察

アメリカ最大級の牛の品評会「ワールド・デイリー・エキスポ」やカナダの「ロイヤルウインターフェア」などに視察に行くチャンスもあります。牛の品評会を間近に見て、牛の良し悪しとは何かということを意識するようになったスタッフも。規模や飼養形態の違う牧場を見たり、受精卵の販売や牛の預かりで幅収入を得ている牧場のあり方に刺激を受けたりできるので、ぜひ参加して勉強してください。